2年E組の教室。
私は自分の席に通学鞄を置く。
少し離れた席のあきらちゃんも通学鞄を机の上にバサッと置いて、私の席に寄ってきてくれた。
「陸くん、びっくりしたね」
私の様子を伺うように、あきらちゃんは言う。
あきらちゃんは深森陸の音楽は好きだと言うけれど、推しているほどではないらしい。
その証拠にあきらちゃんには、他に推しているアイドルがいる。
「今日はみのりちゃん、学校に来ないのかと思った」
「えっ?」
「だって……。推しの結婚とか、一大事じゃん。大変なニュースじゃん。天地、ひっくり返るじゃん」
「……うん」
私は静かに頷いた。
でも。
本当の本当は。
未だに信じられない自分がいるんだ。
陸くんが結婚したなんて、悪い夢でも見てるんじゃないかって思っているくらい。
「本当に陸くんは!みのりちゃんというファンがいながら、どうして他の人と結婚しちゃうかな!」