気分がふわふわして、現実じゃないみたい


「あの、ありがとうございます」

 ちょっと歩いてから、お礼を言ってなかったことに気づいて慌てて彼を見た

「どういたしまして」

 すぐ近くに顔があり、優しい目があたしに向けられている


 頬が火をふいたように熱い


「大学四年生?」

 なんでもないことのようにさりげなく、彼は質問した

「はい、就活中です」

「実家は遠いの?」

「北陸のほうです」

「じゃあ、地元に帰っちゃうのかな?」

「いえ、あの、こっちで就職したいなって……」

「そっか、よかった」


 よかった?


 どういう意味かと、思わずまた彼を見ると、にっこり笑って見つめ返された


 こんなの、心臓がもたない