その日は数日続いていた雪がやみ、冬の澄み渡る青空が広がっていた。
 真っ白に積もった雪は、太陽に照らされ神々しく輝いていた。

 王城の一室では、赤子の泣き声が響き渡り、祝福に包まれていた。

 子が生まれたことを知らせるために一人の騎士が執務室に向かって行った。

 子の父親がいる執務室に到着するとドアをノックし、部屋に入った。
 主の座っている机の前に行き、女の子が無事に産まれたことを伝えた。
 だが、主は大きくため息をつくと、
「やっと産まれたか」
 あまりにも冷たい声で話す主に騎士はそれでも、
「はい、殿下のお子であります」
 と言ったが、その言葉に舌打ちをして、
「確かに私の子には違いないだろう。だが、もう関係ないことだ」
「殿下!!」
「馬鹿馬鹿しい伝説に振り回され、陛下に命令され子供を作った、それだけだ。あの女の国を守る力などなくてもこの国は豊かに発展していけるのだ」

 この主は子を産んだ女性を嫌っており、そのことは二人の周りにいる人間は知っていた。
 
「以後、その親子の報告は不要だ」

 もしかしたら子を産めば関係が変わるかもしれない、と周りの人間は淡い期待を抱いていたが、その願いはむなしく散っていった。

 話しは終わったとばかりに机上の書類に目を通し、仕事を再開した主に何も言えなくなった騎士は一礼をして、執務室を退出する。

「なんと報告すればいいのか…」
 執務室から退出した騎士は廊下を歩きながら、落ち込んだ声で独りつぶやき、重い足取りで祝福に包まれている部屋へと向かって歩いていった。