暗がりの中に確かな物を求めて、私は泰輝の手を掴んだ。
彼は一瞬驚いたような顔をして、その後で柔らかく微笑んで、私の手をしっかりと握り返してくれた。
綺麗だねと笑いあって、再び夜空を見上げた。照らし出された横顔が堪らなく愛しくて、横目で何度も盗み見た。
指先から絶え間なく伝わる温もりは、私たちを確かに繋いでいる。

終焉を思わせる炸裂の中、私たちは人混みを避けるようにして一足先に河川敷を抜け出した。夏の終わりの匂いとジンジン痛みだした素足に何度も引き留められながら、元来た道を二人静かに辿って行く。

「もう今年の夏も終わりだね」

人もまばらな路地裏にさしかかった時、泰輝が少し寂しげに言った。

「もうすぐ新学期だね。泰輝は推薦があるから忙しくなるでしょ?」

「そうだなぁ。推薦受かれば、冬休みはまた遊べるけどね」

「来年の春にはもう、泰輝はこっちに居ないんだね」

その響きの悲しさに飲み込まれ、私は自らの発言をひどく悔やんだ。