「兄ちゃんもリナちゃんも、俺たちで遊ぶなよ」

いつまでも笑っている二人をよそに、泰輝と私は後部座席で顔を見合わせた。

「おー悪りぃ!」

「二人が初々しくて可愛いから、ついいじめたくなっちゃった。柚歌ちゃんごめんね♪」

私は泰輝が妙に大人びている訳が、なんだか少しだけ理解できたような気がした。

慎くんは花火大会の会場近くにあるアパートの前で車を停めた。
そこには慎くんの友達が何人も集まっており、慎くんとリナちゃんとは思いの外早く別れることになった。
既に酔っぱらっていた慎くんの友達に絡まれながらもなんとかそこを脱出し、ようやく二人きりになった時、なんとも言えない安心感が私を包み込んだ。

「柚歌ごめんね、疲れたでしょ?」

泰輝が申し訳なさそうに私の顔を覗きこむ。

「ううん、平気。慎くん、友達いっぱい居るんだね」

「うん。顔だけは広いからね。まぁここまで乗せてもらえたし、良しとしようか」

人で溢れかえる駅をよそ目に、私たちは花火が打ち上がる河川敷を目指した。