手渡された紙袋を開いてみると、中に入っていたのは透明のガラス玉に金魚があしらわれた、控えめなピアスだった。

「浴衣に合うんじゃないかと思って買ってみたんだけど……やっぱり柚歌の好みじゃなかった?」

「ううん、そんな事ないよ。この浴衣にぴったりだと思う。ありがとうお母さん!」

本当は私には少し可愛すぎるような気がしたけれど、何よりも母の気持ちが嬉しくて、そんな事はどうでも良かった。

私は身体の一部になりつつあった七つのピアスを外し、テーブルの上に集めた。
母はそれをいくつか手に取ってまじまじと眺めている。 

随分軽くなった耳たぶに違和感を覚えながら、ガラス玉のピアスを付けてみる。
儚げにゆらゆらと揺れる可愛いらしさがなんだか少し照れ臭い。

ようやく全ての支度が整った時、時計の針は既に約束の五分前を指していた。

「私そろそろ行かなきゃ」

「気を付けるのよ!泰輝くんによろしく伝えて頂戴ね」

「うん。行ってきます」

母の笑顔に見送られ、私は家の外へ出た。
途端に湿気を帯びた浴衣が肌にぴったりとまとわりつく。