母がそう言って顔をほころばせた時、自らを"おばちゃんキラー"と豪語していた泰輝を思い出し、感心せずにはいられなかった。

「そうだ、お母さん?」

「何?」

「今度の土曜日、泰輝と一緒に花火大会に行ってもいい?泰輝のお兄さんと彼女も一緒で、車で送迎してくれるって」

母は少し考えこんだような顔をした後で口を開いた。

「それじゃ、新しい浴衣が要るわね。明日にでも買いに行きましょうか!」

「うん!ありがとうお母さん!」

「柚歌と買い物なんて、いつぶりかしらね」

母が本当に嬉しそうに言ったので私はどうにか涙を引っ込めながら笑った。

「柚歌、叩いてごめんね」

少し冷えた手が、今度は私の頬を撫でる。

「ううん、私も言い過ぎてごめんなさい」

「いいの。お陰で目が覚めたわ。それに……柚歌が本心を言ってくれた事が、私は嬉しかった」

懐かしい母の香りが、私をふわりと包み込んだ。

「私、ずっとこうして欲しかったよ、お母さん」

「ごめんね……柚歌は私の宝物よ」

優しくも確かな母の腕の中で、私は温かな涙を流した。