すっかり遅くなった夕食を、三人で食べた。父はさほど面白くもない笑い話を繰り返して、母はそれを聞いていつまでも笑っていた。私は泣いたり笑ったりしながら、冷えた唐揚げをたくさん食べた。いつもより塩辛く感じた味噌汁が、余計に涙を溢れさせた。

夕食の後、ベッドに寝転んで泰輝にメールを送っていると、控えめなノックの音に続いて母が入ってきた。
驚いて体を起こした私の隣に、母がゆっくりと腰かける。

「実は柚歌に謝らないといけない事がもうひとつあるの」

「何?」

曇った母の表情に、思わず息を呑む。

「あのね、本当は柚歌の電話盗み聞きしてたの。良くないって思ったんだけどつい心配で。本当にごめんなさい」

「うん、分かってた。もうしないでね!」

母は苦笑いを浮かべて、再び謝罪の言葉を口にした。私はもう、それを笑って許す事が出来た。

「泰輝はね、自分も受験生なのに私の勉強を見てくれるし、いつも"柚歌のお母さんが心配する前に帰ろう"って言ってくれるような優しい人だよ。私が初めて好きになれた人なの。だからお母さん、心配しないで」

「そう。東砂原高校ですってね、優秀なのね。礼儀正しくてきちんとした子だって、泰輝くんを一目見たら分かったわ。あんな素敵な彼氏ができるなんて、柚歌もいつの間にか大きくなったわね」