「どこに行ってたのよ柚歌!」
「心配したんだぞ!」
玄関先で詰め寄ってきた父と母は、私の後ろに立っていた泰輝の存在に気づくと、途端に沈黙した。
「心配かけてごめんなさい……」
その後に続く適切な言葉が見つからずに黙りこくっていると、私に代わって泰輝が口を開いた。
「初めまして。柚歌さんとお付き合いをしている東砂原高校三年の斎藤泰輝と言います。柚歌さんは僕と一緒に居ました。帰すのが遅くなってしまいすみませんでした。」
先程までの様子からは想像もつかなかった高校生らしからぬその挨拶に、私は驚嘆させられた。
「柚歌が迷惑を掛けて、申し訳なかったね」
父が深々と頭を下げる。
私は母が泰輝に何を言うのかとビクビクしていた。けれど母は意外にも泰輝に何度もお礼を言って、お中元で届いた缶ジュースやゼリーを目一杯袋に入れると、彼に持たせた。
車で家まで送ると言った父の申し出を丁寧に断ると、泰輝は私にそっと目配せして帰っていった。