「そうかもしれないけどさ、心の中で思ってるままじゃ、いつまでも何も変わらないんじゃないかな」

「そうだけど……」


「うーん……じゃあ柚歌はさ、付き合う前、俺が柚歌のこと好きだって気づいてた?」

「ううん、全然」

「だろ?俺も気づかなかったよ、両思いだなんて。じゃあ俺が柚歌の傷のこと知っちゃった時、柚歌はどう思った?」

「引かれただろうなって。もう終わりだって思った」

「確かに驚きはしたけど、俺はそんな事、少しも思ってなかったよ。俺は柚歌の力になりたいって思ってた。……ほら、言葉にして初めてわかる事って沢山あるんだよ。柚歌の気持ちを言葉にできるのは柚歌だけなんだから。きちんと話せばきっと、お母さんとだって分かり合えるよ」

泰輝は私の頭をくしゃくしゃ撫でてから、ニッコリ笑った。
その後の泰輝は、バイト先の事、友達の事、取り留めもないような事ばかりを、しばらく話し続けていた。
その隣でただ頷いているうちに、私の涙はすっかり乾いた。
ふと携帯電話に目をやると、家を出てから既に、二時間が経過していた。