しばらくの間、国道を走り去っていく車をぼんやりと眺めていた。

罪悪感とプライドの隙間に身を潜めて膝を抱えていると、突然錆び付いた音が近づいてきて、私の前で止まった。

「柚歌!」

顔を上げると、泰輝は息を切らしながら笑っていた。
何もかもを置き去りにして、彼の胸に飛び込んだ。

「どうした?珍しく家出でもした?」

心地よい温もりとマリンノートにすっかり包み込まれた時、私は人目も憚らず声を上げて泣いた。

いつまでも泣き止まない私を乗せて、泰輝は静かに自転車を走らせた。カラカラと規則的にまわるチェーンの音が妙に優しかった。
人気(ひとけ)のないバス停に差し掛かった時、泰輝がそこで自転車を止めて、私たちはピンク色のペンキが所々剥げた椅子に並んで腰掛けた。

私はそこで思いつくまま、泰輝に全てを話した。
彼はその間中、私の背中を摩りながらただ頷いて聞いていた。

いつしか話が幼少期の事にまで及んだ所で、私は取り留めない身の上話を長々としてしまった事に気づき、口をつぐんだ。