【柚歌もう飯食った?花火大会楽しみだね。 泰輝】

暗闇の中でそれだけがいつもと変わらない穏やかな光を放ち、私を優しく照らし出す。
私は着信履歴の中に埋もれてしまった彼の名前を探した。

「もしもし、柚歌?どうかした?」

七度目の呼び出し音の後でようやくその声を聞いた時、私の中の全てが溢れ出してきて、もう言葉にはならなかった。
困惑と憂慮に満ちた声を聞きながら、私はただただしゃくり上げた。

「柚歌、落ち着いて。どこにいるのかだけ教えてくれない?」

「……国道沿いの……スクエアマート……」

「わかった、すぐに行くからそこに居て」

返事をする間もなく、電話は切れた。 

明明としたコンビニの蛍光灯の光が、僅かに届く駐車場の隅。
虫たちの散っていくバチバチという音だけが虚しく響くその場所で、私は泰輝が来てくれるのをじっと待っていた。