お盆休みを迎え父が単身赴任先から帰省すると、私には束の間の安息が訪れた。
母が甲斐甲斐しく父の世話を焼くその短い間、私は母の監視の目から少しだけ解放されるのだ。

そうは言ってもあいにく。
泰輝は繁盛期であるダイビングショップのアルバイトで忙しく、那月もおばあちゃんの家に帰省中だ。
私はやむを得ず、山ほど残っている課題で暇を潰しながら一日を過ごしていた。

夕方勉強机に向かっていると、ベッドの上に転がっていた携帯電話が鳴った。画面に表示された名前を見て、私はすぐに通話ボタンを押した。

「もしもし?今、バイト終わったよ」

「お疲れ様。毎日忙しいね」

「全然会えなくてごめんね。柚歌、何してた?」

「私は夏休みの課題してたとこ。今のうちに出来るだけ片付けちゃおうと思って」

「そっか!偉いじゃん」