ルーズリーフの上に次々と生み落とされる几帳面な文字や、私とは違っているXの書き方、問題を解いている時の真剣な横顔。
シャープペンシルの音がサラサラと響く部屋の中で、私の目にはその全てが眩しく映った。

「こら、俺に見惚れてないでちゃんと勉強して」

「見惚れてない……」

恥ずかしさを紛らわす為に再びプリントと向き合った直後、少々乱暴なノックの音がして部屋の扉が勢いよく開いた。

そこに立っていたのは、泰輝と同じくらいの背丈をした男の人だった。
長めの髪に大きく拡張されたピアスホール、やたらと存在感のあるシルバーのネックレス。
迫力ある見た目とは裏腹に、手にはお茶とお菓子が乗せられた可愛らしい花柄のお盆を持っている。

「兄ちゃん、何か用?」

「いや、お袋がお茶持って行って泰輝が変な事してないか見てこいって言うから」

「別に何にもしてねーよ」

「おー勉強してんのか、感心感心」

泰輝のお兄さんはずかずかと部屋に入って来ると、テーブルの上にお茶とお菓子を置いてから私の方を向いた。初めて会った筈のその顔に、私は何故か見覚えがあった。