「泰輝くんに泣かされたら私に言いなよ。秀くんと二人でボコボコにしちゃうから♪」

「那月、お前可愛い顔して結構恐い事言うよなー」

「え、秀くん、私可愛い?」

「自分に都合のいい所だけ切り取るなよ」

「いいの、何事もポジティブが大切だから♪」

「お前って本当に羨ましいやつだよな」


良くも悪くも、秀くんと那月は本当にお似合いのカップルだ。
私はまるで夫婦のように息ぴったりなやり取りを、微笑ましく思いながら見ていた。

程なくして訪れたお開きの後、泰輝と私はどちらからともなく、あの砂浜を訪れた。二人きりになるとまだなんとなく照れ臭いような気がして、つい無口になってしまう。

「今日、秀がやたらと絡んでたけど平気だった?」

階段に腰を下ろした直後、泰輝は急に心配そうな顔をして私を覗き込んだ。

「大丈夫。気にしてないから」

私が微笑んで見せると、彼は脱力した身体を、コンクリートにどさっと預けた。

「あいつ、あんな感じだけどさ、本当はかなりいい奴だから」

どこかで聞いたようなそのセリフに思わず吹き出した私を、泰輝は不思議そうに見つめる。