波の音がその存在感を増して、やたらと強く響いた気がした。
私が一度だけ大きく頷くと、泰輝くんは顔をくしゃくしゃにして笑った。私は貝殻を握りしめたまま、小さな子どものようにいつまでも泣いた。
「これからは俺がいるから。もう大丈夫」
帰り道、そう言って差し出された右手が照れ臭くて、指先をほんの少しだけ繋いだ。
「私でいいの?」
「馬鹿だなー。俺、柚歌ちゃんじゃないと嫌だよ」
眩しいその笑顔が今、私だけに向けられる。
繋いだ指先をそっと握ってみた。力強く握り返してくれるのがたまらなく嬉しくて、頼もしくて、私は駅に着くまでの間中、何度もそれを繰り返した。
手のひらの中の小さな貝殻と、どこまでも広がる青い海。ただそれだけが、私たちの夏のはじまりをそこで静かに見ていた。
私が一度だけ大きく頷くと、泰輝くんは顔をくしゃくしゃにして笑った。私は貝殻を握りしめたまま、小さな子どものようにいつまでも泣いた。
「これからは俺がいるから。もう大丈夫」
帰り道、そう言って差し出された右手が照れ臭くて、指先をほんの少しだけ繋いだ。
「私でいいの?」
「馬鹿だなー。俺、柚歌ちゃんじゃないと嫌だよ」
眩しいその笑顔が今、私だけに向けられる。
繋いだ指先をそっと握ってみた。力強く握り返してくれるのがたまらなく嬉しくて、頼もしくて、私は駅に着くまでの間中、何度もそれを繰り返した。
手のひらの中の小さな貝殻と、どこまでも広がる青い海。ただそれだけが、私たちの夏のはじまりをそこで静かに見ていた。