「連絡しなくてごめんね」

一生ここから抜け出せないような気すらし始めた時、泰輝くんがぽつりと言った。
私は突然のことに上手く声を出せなくて、ただただ首を横に振った。

「私こそごめんなさい。泰輝くんは、悪くない」

潮風を大きく吸い込んでやっとそう言った時、私たちを隔てていた薄い壁は、砂の城のように一気に崩れ落ちていった。

「俺、何て言ったら良いのか分からなくて……何言っても傷つけるような気がしてさ。でもかえって傷つけたよね。ごめん」

何を言われても受け止めなくてはいけない、そう思っていたのに。その言葉があまりにも優しく響き渡って、私は喉の奥にこみ上げてくる熱さを必死で飲み込んだ。

「誰かに見られるなんて、思わなかったから。嫌な気持ちにさせちゃったよね。ごめんなさい」

泰輝くんは穏やかな表情で首を横に振った後、砂浜に目線を落として何かを考えているようだった。そして再びその顔を上げた時、思わずドキリとするような事を口にした。

「柚歌ちゃんは、死にたいって思ってる?」

私は彼の言葉に、即座に首を横に振った。