もう少しマシな服を着てこれば良かったとか、きちんとメイクしておけば良かっただとか、頭の中でそんな事ばかりを考えながら、足だけは心臓と同じペースで絶え間なく動き続けていた。
身体はたしかにそこを目指しているのに、心の隅ではどこか躊躇っていた。心と身体がもつれて転びそうになりながら、私はそれでも堤防沿いをひたすら進んだ。
あの場所に着いた時、第一声、私はなんと言ったら良いのだろう。
答えがちっとも浮かばないまま景色だけが流れていって、私は堤防の上に、その姿を見つけた。
「久しぶり。柚歌ちゃんの私服、初めて見た」
静かに笑った泰輝くんは、心がどこか遠くにいるかのように見えた。
「久しぶりだね」
乱れた呼吸を整えながら、無理矢理口元を引き上げる。
「柚歌ちゃん、もしかして何か用事あった?ごめんね急に」
「ううん、大丈夫。わざわざ上がってきてくれたでしょ?」
「よく分かったね」
「電話で波の音……聞こえたから」
泰輝くんは「そっか」と一言だけ呟いて、私を引っ張り上げた。
階段に腰掛けてしばらくの間、二人で海を眺めていた。時間が経てば経つ程に、言葉を発するのが恐くなった。
身体はたしかにそこを目指しているのに、心の隅ではどこか躊躇っていた。心と身体がもつれて転びそうになりながら、私はそれでも堤防沿いをひたすら進んだ。
あの場所に着いた時、第一声、私はなんと言ったら良いのだろう。
答えがちっとも浮かばないまま景色だけが流れていって、私は堤防の上に、その姿を見つけた。
「久しぶり。柚歌ちゃんの私服、初めて見た」
静かに笑った泰輝くんは、心がどこか遠くにいるかのように見えた。
「久しぶりだね」
乱れた呼吸を整えながら、無理矢理口元を引き上げる。
「柚歌ちゃん、もしかして何か用事あった?ごめんね急に」
「ううん、大丈夫。わざわざ上がってきてくれたでしょ?」
「よく分かったね」
「電話で波の音……聞こえたから」
泰輝くんは「そっか」と一言だけ呟いて、私を引っ張り上げた。
階段に腰掛けてしばらくの間、二人で海を眺めていた。時間が経てば経つ程に、言葉を発するのが恐くなった。