そんな私に入学してすぐ懐いてきた変わり者、それが那月だった。
それが何故なのかは未だに分からないけれど、私が孤立することもなく平穏な高校生活をスタートする事ができたのは間違いなく彼女のおかげだ。

「那月ー!帰ろ!」

「うん、ちょっと待ってー!」

学校から最寄り駅までは徒歩十五分。
私たちは毎日その道のりを、他愛も無い会話をしながらのんびり帰る。

「あれ。柚歌それ、新しいピアス?っていうか、もしかしてまたピアスの穴増やした?」

「うん、可愛いでしょ?」

左耳に開けたばかりの一番新しいピアスホール、そこに刺さった蜘蛛の形をしたピアスを、那月は目敏く見つけたらしい。

「いや、お世辞にも可愛いとは言えないけど……そういえばさ、ピアスの穴開けると運命変わるとかなんとか言うよね」 

那月は私のピアスを容赦なくけなした後で、お伽話みたいなことを言い出した。もし彼女の話が本当ならば、私の運命はもう既に七回は変わっている事になる。
もっとも運命なんて信じていない私はそれを聞き流して、肯定も否定もしなかった。

「じゃあ柚歌、また明日ね!」

「うん、ばいばーい」

そうして改札口で別れたばかりの那月からメールが届いたのは、電車に揺られだしてから僅か数分後のことだった。

【柚歌ごめん!一番大事なこと言い忘れた!明日テストが終わったら(ひで)くんとカラオケに行くんだけど、秀くんが学校の友達連れてくるから、柚歌も一緒に来て♪強制ね! 那月】