私がフライドポテトを口に運んだ直後、那月はまたもや唐突に言った。慌てて皿の淵に置いたフォークがバランスを崩し、カシャンと耳障りな音を立てる。

「中一の時、秀くんの卒業式の日に手紙で告白してね。そしたらその日の夜に電話一本で振られちゃったの。他の学校に彼女が居るって。そんなの全然知らなかったから、すっごい凹んで」

それは初めて聞く話だった。
二人の馴れ初めについては同じ中学でテニス部の先輩後輩だったという事くらいしか知らなかったし、きっと秀くんが那月に猛烈にアプローチをかけたのだろうと、私は勝手に思い込んでいた。彼女はいつだって選ぶ側の人間だと、今まで信じて疑わなかったのだ。

「無理矢理諦めて、その後で他の男の子と付き合ったりもしたんだけど、結局上手くいかなかったの。それでね、中三の時部活に遊びに来た秀くんに久しぶりに会って。やっぱりこの人が好きだなぁって思って、諦めきれてない自分に気づいたんだよね」