私は波が行ったり来たりするのと泰輝くんとを交互に見ながら、頭の中で鞄の中のクッキーをいつ出そうかと推し量ったりもしていた。
そして二人の間に少しの沈黙が流れた時、私はすかさず鞄を開けた。自然にそうしたかったのに、ジッパーの音は思った以上に大きく響く。

「これ、CDのお礼なんだけど……良かったら食べて」
 
少しも可愛げのない言い方をしてしまったから、ピンクのリボンで可愛くラッピングしておいたのは良かった。
重たい奴だと思われたらどうしようと恐る恐る手渡したそれを、泰輝くんは想像以上に喜んだ。

「柚歌ちゃんが作ったの?これ」

私が頷くと、彼は袋のリボンをほどいて丸いのを口に入れた。

「口に合うか、分からないけど」

そうは言ってみたものの、昨日出来上がってすぐに味見をし、今日の昼休みには那月のお墨付きも貰っているので、そこそこの出来だという自信はある。