「ごめんね、お待たせ」

鞄の中のCDとクッキーを気に掛けながら、そっと駆け寄る。
その姿を見上げれば顔が真っ赤になってしまう気がしたから、あえてそうはしなかった。
それなのに 

「柚歌ちゃんちっちゃいからさ、一人で上がって来れないかと思って。だからここで待ってた」

そう言って悪戯に笑った後で、泰輝くんがまた手を差し出したから、私の顔は結局真っ赤になっていたと思う。
そして彼の手を握る時、それは一度目よりもいっそう躊躇われたような気がした。

「これ、ありがとう。今回のアルバム凄く良かったね」

階段に並んで腰掛けてすぐ、私はCDを差し出した。波の音だけを聞くのがなんだか今日は怖かったのだ。
泰輝くんはそれを鞄にしまった後、何番めの曲が好きだったかと私に聞いて、その後しばらくは二番めと七番めについての会話が続いた。