高校一年生の初夏。

梅雨の晴れ間の、蒸し蒸しと暑い昼下がり。
一学期期末テストの最終日を明日に控えてすっかり気が緩み始めたせいか、教室内はやけにザワついていた。

柚歌(ゆか)〜!今日のテストどうだった?出来た?」

「ううん、全然。現代文は撃沈かも」

「やっぱり!?同じく!」

チャイムの音と同時に私の元に飛んできたのは、クラスメイトの小林那月(こばやしなつき)
私の言葉を聞いた途端、那月は小さく叫んで安堵の表情を浮かべた。


高校に入学して早三か月。
那月とはクラスで一番の仲良しになった。
とはいえ私と彼女は似ても似つかない、まるで正反対の人間だ。

子犬みたいにクリッとした目に、ナチュラルにカールした長いまつげ、ふんわり巻いた栗色のミディアムヘア。
人懐っこくて愛嬌のある那月は、あっという間にクラスに馴染み、先輩達からも可愛がられている。

一方の私は、真っ黒なストレートの髪に、冷たく見られがちな奥二重のつり目、耳に幾つもピアスをつけた見た目が少々とっつき難いらしく、クラスメイト達さえもあまり寄り付かない。
人見知りな性格も災いして、新しい環境に馴染むのが苦手なのは昔からの事だ。