「もしもし泰輝くん……?今平気?」

「うん、今ちょうど帰り。どうかした?」

「あのね、あの……借りたCD、凄く良かった!ありがとう」

「あぁ、それは良かった!どういたしまして」

私は咄嗟に思いついた言葉を口走っていた。
泰輝くんの声が嬉しそうに弾んだのを聞いて、ひとまず胸を撫で下ろす。

「それで、夏休みに入る前に返したいなーと思って。会えないかな?明日……とか」

「明日?俺は大丈夫だよ」

「本当?じゃあさ、明日また行ってもいい?このあいだの場所」

勇気を出してそう告げると、彼は電話の向こうでクスっと笑った。

「そんなに気に入ってくれた?いいよ、わかった。明日あの場所で待ってる」 

「うん、それじゃ、また明日」

私は駅のホームで一人不自然な笑顔を浮かべながら、軽やかな足取りで家路を急いだ。