「まぁ、とにかくさ!何もしないで後悔するくらいなら当たって砕けなよ!」

那月は恥ずかしげもなくそう付け加えた。こんな漫画のようなセリフをさらっと言えてしまうのも、彼女の良い所なのかもしれない。

「砕けたくはないんだけど」

「大丈夫。その時は私がちゃんと慰めてあげるから」

人ごととあってか、声のトーンがやけに高い。




「葉山と小林ー!」

昼休み終了五分前、担任の森山先生は教室に入ってくるなりそう叫んで、私たちの会話に割り込んできた。

「あ、先生。さては悪い話でしょ」

「おー小林。なかなか冴えてるな!この間の数学のテスト、残念ながらお前ら二人共赤点だったぞ!ということで、夏休みは補習な。それからこれは追加の課題。夏休み明けに提出するように」

森山先生はクリップ止めされた分厚いプリントの束を、私たちに一部ずつ手渡した。

「「えぇー……」」 

補習はなんとなく覚悟していたものの、想定外だったプリントの束を見て、私たちは思わず声をあげた。