「ちょっといいかもって思ってるだけだよ!それに、向こうはどう思ってるか分かんないし……」

本当は毎日メールの受信音が鳴る度に一喜一憂している程重症だという事は、例によって那月には伏せておいた。
煮え切らない態度の私に、那月は容赦なく詰め寄ってくる。

「まったく柚歌はー。そんな事言ってたらせっかくのチャンス逃しちゃうよ?泰輝くんって優しいし、背も高いし、運動神経良くてバスケ部のキャプテンもしてたし。モテない訳が無いもん!」

彼女が発したド正論には、ぐうの音も出なかった。

「それにさぁ……」

「……それに?」 

「泰輝くんてさ、東砂原の中でも結構成績優秀らしいよ。だからもしかして卒業したら県外の頭良い大学とか行っちゃうんじゃないかな?ちなみに秀くんは、既に県外の大学受けるって決めてるみたい……」

那月は途端に勢いを無くすと、頬杖をついてため息を漏らした。

私たちの住む県には数える程しか大学がなく、県外の大学を受験する人は決して少なくない。
秀くんや泰輝くんのように進学校に通う人なら、それは尚更の事だろう。