夏休みを間近に控え、日々増していく暑さとあの日の出来事が、私の頭をぼんやりとさせていた。

「……それでね、その後ね………ねぇちょっと、柚歌!聞いてる!?」

「……へ?……あぁ、ごめん。ぼーっとしてた」 

ふわふわと異次元を彷徨っていた私の意識は、那月の声によって騒がしい昼休みの教室へと呼び戻された。

「もー。最近の柚歌どうしちゃったの?いつもボケーっとしちゃってさ!まさか、恋とか?」

意地悪な笑みを浮かべながら、那月が私を肘で突く。

「え?いや、まぁ……」

返す言葉を無くして黙り込んでいると、彼女の表情は、みるみるうちに変化していった。

「え、うそっ。その反応は図星!?相手は?もしかして……泰輝くん!?」

隠す間も無く核心を突かれ、正直に白状する事にした私は、仕方なくコクンと頷いた。
私はいつしか自分の恋心に気づき始めていたのだ。

「えーやっぱり!?私、柚歌と泰輝くんは絶対に合うって、最初から思ってたんだよねー♪」

うんうん、と頷きながら、那月は一人満足げに盛り上がっている。