私と彼は何故こんなにも違っているのだろう。
二歳の年の差のせいなのか、はたまた別の理由なのだろうか。
そんな事を考えながら、揺れ動く地平線をしばらく眺めていた。




日差しがすっかり穏やかになった頃、泰輝くんは僅かに残っていたスナック菓子を一気に平らげると、ゆっくり立ち上がって伸びをした。

「そろそろ帰ろうか」

「うん、そうだね」

本音を言えば、もうしばらくここに居たかった。もう少しだけ泰輝くんの隣で、波の音を聞いていたいと思った。

けれど家で待つ母がそれを許すはずも無い事は火を見るよりも明らかだ。
私は重い腰を上げ、現実世界へと続く階段を昇った。

「柚歌ちゃん。今日の場所はさ、二人だけの秘密ね」

誰も居ない堤防沿いで、泰輝くんは何故か声をひそめながらそう言った。なんだかそれが妙に可笑しくて、私も彼と同じように小さな声で「分かった」と返事をした。

「素敵な場所、教えてくれてありがとう」

「だから俺言ったでしょ?変な場所には連れて行かないって」 

大人びた彼の得意げな表情は、少しだけ子どもっぽく見えた。

「本当だったね。ちょっとだけ疑ってた」

「まったく……失礼しちゃうよなー!」

「ごめーん!」

人気(ひとけ)のない堤防沿いの道に、私たちの笑い声だけが響き渡った。


嬉しいような、恥ずかしいような、それでいて少し、切なさが混じっているような。

生まれて初めて味わった不思議な気持ちが、限りない波のように何度も打ち寄せ、私の心をしゅわしゅわと溶かし始めていた。