それからというもの、泰輝くんとは頻繁に連絡を取り合うようになり、私はメールのやり取りの中で少しずつ彼のことを知っていった。
バスケ部を引退したばかりだという事、四つ歳上のお兄さんがいる事、スキューバダイビングが趣味だという事。

そして偶然にも、私たちが同じバンドのファンだという事が発覚してからは急速に距離が縮まって、時々彼がかけてくる電話で他愛もない事を話したりもするようになった。



「……そういえば、柚歌ちゃんもう新しいアルバム買った?」

「まだだよ。泰輝くん買った?」

「買ったよ!すげー良かったから貸してあげようか?」

「え、いいの?聴きたい!」

「貸すよ。柚歌ちゃんいつが都合いい?」

「私は部活もバイトもしてないから、いつでも大丈夫だよ」

電話越しの勢いでそう答えてしまった直後、うかつだったかもしれないと少し後悔した。
彼とはここ最近毎日連絡を取っているものの、直接会うとなると話はまた別。
男の子と気軽に会える程の免疫も、適当にあしらう様なスキルも、私はまだどちらも持ち合わせていなかったのだ。