「那月!声が大きい!」

「ごめんごめん♪でも泰輝くんてさ、見た目は超イケメンって訳じゃないけど、優しいし大人な感じだし良い人だったでしょ?」

「まぁ、確かに。悪い人では無さそうだよね……」

泰輝くんの屈託ない笑顔が思い出される。

「ほら!柚歌、実は結構アリなんでしょ?泰輝くん彼女いないし、今がチャンスだよ!」

那月が言葉の軽々しさとは裏腹にあまりに真面目な顔をして言ったので、私は飲んでいたお茶を吹き出しそうになってしまった。

「ちょっと、別にそんなんじゃないって!まだ一回しか会ったことないのに!」

「ま、その気になったら秀くんと私はいつでも協力するからさ!ね♪」

私の訴えは、どうやら那月の耳にはまるで届いていないらしい。
一度会っただけの"友達の彼氏の友達"なんて、アリとかナシとかそれ以前に、まだ友達と呼べるかさえも怪しいのに。




噂をすればなんとやら。
ちょうどその時タイミング良く、私の携帯電話が鳴った。

【秀は俺がシメといた! 泰輝】

なんとも物騒なメッセージにほんの一瞬笑ってしまった私を、那月は決して見逃さなかった。観念した私は、机越しに身を乗り出してきた彼女に携帯電話の画面をそのまま見せた。

「あー!ちょっと柚歌!昨日の事、泰輝くんに密告したでしょ!」

「ふふ……これでおあいこだね!」

私たちは二人、顔を見合わせてしばらく笑った。