「今朝の柚歌、らしくなかったじゃん!どうしちゃったの?」

昼休み、那月はお弁当の卵焼きをつつきながら怪訝そうに首を傾げた。

「別にどうもしてないよ。那月達の"用事"の事思い出したら、ちょっと笑えちゃっただけ!」 

泰輝くんとメールしていただなんて、彼女には知られない方が良いに決まっている。

「もう!だからそれは悪かったよー。それはさておき……昨日どうだったの?あの後!」

「え、あの後?駅まで送ってもらったよ」

それが何か?という具合に、出来るだけ落ち着いたトーンで答えた。

「それで?」

「それでって、それだけ」

「本当にー?それだけー?」

那月ご自慢の大きな目でじーっと見つめられた私は、蛇に睨まれたカエルのような気になって、結局呆気なく降参した。

「それだけ。だけど、あとは……連絡先も交換した」

「きゃー!!ちょっとー柚歌やるねぇ!」

待ってましたと言わんばかりに、黄色い歓声が上がる。
やっぱり言わなければ良かったと、私はすぐに後悔した。