「もしかして、君が柚歌ちゃん?」

ヒロさんが私の事を紹介しかけた時、ヒロさんと同じくダイビングショップのオーナーをしているという一番年配風のダイバーが、口を挟んだ。

私が呆気に取られて一度だけ頷くと、彼は嬉しそうに言った。

「いやぁ、昔泰輝と会うたびに、よく君の話をしてたんだよ。いつも"いつか連れてきて会わせてくれよ"なんて言ってたんだけど、なぁ……」

「ゲンさん、ちょっと口を慎んで」

私に気を遣ったのか、周りにいたダイバーの一人がひきつった顔で彼をたしなめた。
すると彼は恐縮したように謝罪の言葉を口にしたので、私は慌てて首を横に振った。

「いえ、いいんです。泰輝が良くしていただいていた方たちにお会いできて、私も嬉しいです」

ダイバー達は安心したように笑って、私の知らなかった昔話や海の中の素晴らしさについて、少しの間聞かせてくれた。そして激励の言葉を口にした後、皆で海に入っていった。

どうやら彼らは私たちの様子を、始めからこっそり見守ってくれていたらしい。