その後何度か練習してみたものの、やはり恐怖心が拭えず、ヒロさんの指示で私たちは一旦岸へ上がる事になった。

「柚歌ちゃんどうしたの?やっぱり怖かった?」

ユキさんはすぐに駆け寄ってきて、機材を全て外してくれた。

「ごめんなさい。私やっぱり、無理かもしれない……」

「大丈夫!最初はみんなそんなもんだよ。よくある事だから気にしないでいいよ」

「柚歌ちゃん、もし今日無理そうなら、また日を改めてもいいし……」

ヒロさんとユキさんが心配そうに私を覗き込む中、那月が私の横に腰掛けて言った。

「ちょっと待ってよ柚歌、そんな簡単に諦めてちゃっていいの?泰輝くんが見てた景色、見たいんじゃなかったの?」

「柚歌ちゃん、そうなのか?」

ヒロさんは急に目の色を変えた。
ユキさんはそっと私の両手を握った。
二人は皆と同じように、私の前で泰輝の名前を口に出さなかった。
店先には今でも、泰輝とヒロさんが肩を組んで笑う写真が飾られたままだ。