「私、もう大丈夫だよ」

ウミネコが応える。
声はない。

一……ニ……三……四……

限りない波の数を数えていた。

やがていっそう大きな波が押し寄せた時、私はピンク色を手放した。
空中で弧を描いたそれは、あっという間に波に溶けた。
海底に沈んでゆくのか、遥か彼方に運ばれて行くのか、その行方はわからない。

「もう、大丈夫」

私はもう大丈夫。
きっと、一人で進んで行ける。

いつだって、私の海は此処にある。


潮風にさらされた耳たぶに触れる。
ぶら下がるいびつな輪郭をなぞると、カラカラと幸運の音がした。