私は一瞬、返答を躊躇った。
舌先に残っていたしょっぱさを、アイスコーヒーで洗い流す。
「実は私、去年一度こっちに帰って来たんだ。八月の、泰輝の七回忌の時に。その時に色々思う事があって、やっぱり私の居場所は此処なのかなぁって、そんな気がしたんだよね」
出来るだけ明るく言って見せたつもりだったのに、那月の顔から笑顔が消えた。
彼女の前で泰輝の名前を口にしたのは、一体何年ぶりだろう。
泰輝が亡くなった後、那月は何度も何度も私に謝って、それから二度と彼の名前を口にしなかった。
それは那月に限った話ではなかったけれど、彼女の前では特に、泰輝の名前を口にしてはいけないような気がしていた。
「そっか……時間が経つのって早いね。柚歌……平気?」
「うん、もう大丈夫。一時はもう、こっちには帰ってこられないんじゃないかって思ってたんだけどね。だけど向こうにいた時も、那月何回も会いに来てくれたでしょう?私、凄く救われてたよ、ありがとう」
私がそう言い終えるや否や、那月はポロポロと泣き出してしまった。
やっぱり彼女の前でこの話題に触れるべきではなかったのだろうか。
自分の発言を後悔しながら席を立ち、彼女の横に座り直す。
「那月、ごめんね、私……」
舌先に残っていたしょっぱさを、アイスコーヒーで洗い流す。
「実は私、去年一度こっちに帰って来たんだ。八月の、泰輝の七回忌の時に。その時に色々思う事があって、やっぱり私の居場所は此処なのかなぁって、そんな気がしたんだよね」
出来るだけ明るく言って見せたつもりだったのに、那月の顔から笑顔が消えた。
彼女の前で泰輝の名前を口にしたのは、一体何年ぶりだろう。
泰輝が亡くなった後、那月は何度も何度も私に謝って、それから二度と彼の名前を口にしなかった。
それは那月に限った話ではなかったけれど、彼女の前では特に、泰輝の名前を口にしてはいけないような気がしていた。
「そっか……時間が経つのって早いね。柚歌……平気?」
「うん、もう大丈夫。一時はもう、こっちには帰ってこられないんじゃないかって思ってたんだけどね。だけど向こうにいた時も、那月何回も会いに来てくれたでしょう?私、凄く救われてたよ、ありがとう」
私がそう言い終えるや否や、那月はポロポロと泣き出してしまった。
やっぱり彼女の前でこの話題に触れるべきではなかったのだろうか。
自分の発言を後悔しながら席を立ち、彼女の横に座り直す。
「那月、ごめんね、私……」
