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「柚歌久しぶりー!」

私たちのお気に入りだった窓際のソファー席。
那月の姿は、今日もやっぱりそこにあった。

私たちが青春時代を過ごしたファミレスは、今も変わらず駅前の一角に佇んでいた。外観こそ塗り替えられてはいるものの、店内のレイアウトはほとんどあの頃のままのようだ。


「那月、遅くなってごめんね」

「ううん、私もさっき来たとこ!ドリンクバーとポテト、先に頼んどいたよ」

「本当?ありがとう。じゃあ私も、飲み物とってくる」

ドリンクバーでアイスコーヒーをたっぷりと注いでから席につくと、古ぼけたソファーはギシッと苦しそうな音を立てた。

「新しい仕事はどう?帰ってきて少しは落ち着いた?」

「うん、職場の人も皆いい人だし、何とかやっていけそうだよ。部屋もようやく片付いたところ。那月は旦那さんと仲良くやってる?」

「それなりにね。まぁ、昨日もしょうもない事で喧嘩したけど……そういえば柚歌は、例の彼とどうなってるの?柚歌がこっちに帰ってきちゃって、向こうで寂しがってるんじゃないのー?」

「例の彼って、健ちゃんの事?時々連絡はしてくるよ。だけど前から言ってるでしょ?別に健ちゃんとは、そういうんじゃないってば」

「ふーん……本当かなぁ?」

私が頷いて見せると、那月はアイスティーを飲んでから大きな目を更に見開いた。
こういった話をする時の彼女の表情は、学生時代とちっとも変わっていない。