締めくくりの言葉には、少しだけ笑った。
溢れ出した大粒の涙が綺麗な文字を汚さないように、私は便箋を再び封筒の中に収めた。

誰にも祝われなかった、祝わせなかった十七歳の誕生日。

泰輝を追い越して、いくつも大人になった事。

もうすぐ二十三歳になる私が、この手紙をようやく読んだ事。

泰輝が思っていた以上に、私たちは遠く離れてしまった事。

彼も私も、そのどれもを知らずにいた、あの夏の日。

今も泰輝は何処か、遥か遠くで、私の幸せを願ってくれているのだろうか。
袋の中のもうひとつを取り出す。
きっとこの綺麗な小箱の中にも、その答えは見つからない。

リボンと包装紙を出来るだけ丁寧に剥がし、ようやく顔を出したクリーム色の箱を開けると、中には小さくいびつな石がついたピアスが入っていた。
それはまるで長い間海底に沈んでいたような、真っ青な石だった。
これが地球の欠片だと言われれば、私はそれを信じるかもしれない。

箱の中に同封されていたカードに目を通すと、そこには石の名前が書いてあった。

"ラピスラズリ 〜海が運んだ幸運の石〜"

海はいつだって、私に幸せをもたらしてくれる。
今までも、そしてきっと、これからも。

「泰輝、ありがとう。大事にするね」

返事はなくとも、この言葉がどうか届いていますように。
子供部屋の隅で一人、ただただそれだけを願っていた。