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窓の隙間から聞こえてくる近所の犬の鳴き声が、私の意識をどうにかこちら側に繋ぎ止めていた。
勉強机の上の茶色い紙袋を目の前に、何度目かのため息をつく。鼓動は後から後から、いつまでも迫ってくる。
はやる気持ちと躊躇う気持ちがぶつかり合うのを感じながら、私は意を決して、袋の中の封筒を取り出した。
"柚歌へ"
表側に並んだたった三文字を、しつこい位に確かめた。それが泰輝のものである事は、やはり間違いないようだ。
あの頃泰輝の横で、自分の丸く歪んだ文字を見ては苦笑いした事を思い出す。
懐かしさと愛しさで、既に胸は押し潰されそうだ。
飾り気のないセロテープでぴっちりと封をしてある所にさえ、何処か彼らしさを感じる。
引き出しの中にあったハサミをペーパーナイフ代わりにして、慎重に封を開く。
小刻みに震え続ける手が、もどかしい。
中からやっと取り出した一枚の真っ白い便箋にはやっぱり飾り気がなくて、薄グレーの罫線の上に真っ黒い文字が、整然と並んでいるだけだった。
"柚歌 十七歳の誕生日おめでとう!
今年は誕生日を一緒に祝う事ができて嬉しいです。
今は側に居られなくて寂しい思いもさせるけど、
俺は近くにいても遠くにいても、いつも柚歌の幸せを願っています。
これからもずっと、俺の側にいてね。
(柚歌の海)泰輝より"
窓の隙間から聞こえてくる近所の犬の鳴き声が、私の意識をどうにかこちら側に繋ぎ止めていた。
勉強机の上の茶色い紙袋を目の前に、何度目かのため息をつく。鼓動は後から後から、いつまでも迫ってくる。
はやる気持ちと躊躇う気持ちがぶつかり合うのを感じながら、私は意を決して、袋の中の封筒を取り出した。
"柚歌へ"
表側に並んだたった三文字を、しつこい位に確かめた。それが泰輝のものである事は、やはり間違いないようだ。
あの頃泰輝の横で、自分の丸く歪んだ文字を見ては苦笑いした事を思い出す。
懐かしさと愛しさで、既に胸は押し潰されそうだ。
飾り気のないセロテープでぴっちりと封をしてある所にさえ、何処か彼らしさを感じる。
引き出しの中にあったハサミをペーパーナイフ代わりにして、慎重に封を開く。
小刻みに震え続ける手が、もどかしい。
中からやっと取り出した一枚の真っ白い便箋にはやっぱり飾り気がなくて、薄グレーの罫線の上に真っ黒い文字が、整然と並んでいるだけだった。
"柚歌 十七歳の誕生日おめでとう!
今年は誕生日を一緒に祝う事ができて嬉しいです。
今は側に居られなくて寂しい思いもさせるけど、
俺は近くにいても遠くにいても、いつも柚歌の幸せを願っています。
これからもずっと、俺の側にいてね。
(柚歌の海)泰輝より"