私がそれを否定すると、慎くんは「ありがとう」と柔らかく笑った。
自らが発した一言で、少しだけ自分のことも許せたような気がした。

「皆にもそう言われたよ。俺以外、誰も俺の事責めたりしなかった。おかげで今はもう、俺が家族を守って泰輝を安心させようって前向きに考えてる。大事な弟を亡くした事は辛いけど、自分を責めたり、人を憎んだりしても、泰輝はもう帰ってこねぇからさ。だから柚歌ちゃんも……頼むからもう、自分を責めたりしないでくれ」

きっと慎くんは、秀くんからおおかた全てを聞いたのだろう。
だからここで、私が自分の事を再び話すのは無意味かもしれない。そう思ったけれど、私は話す事にした。
泰輝の前できちんと言葉にしたかった。それがもう届かないとしても。

「私も恐かったんです。あの日私が着いて行かなかったから……泰輝のお父さんお母さんにも慎くんにも、合わせる顔がなかったんです。だから帰ってこられませんでした。それに私はどんどん歳を取って、だけど泰輝は変わらないままで、帰ってきたらそれを全て受け入れなくちゃいけないのが、凄く恐かった」