「これは確かに趣味が悪かったね」

母はちょっと眉を潜めてからクスクス笑った。

「そうね。でもきっと、あの頃の柚歌にはそれが必要だったのよね」

「うん。そうだったのかもしれない」

七つあったピアスホールは、いつしか左右ひとつずつになり、今ではそれすらも使う事が稀だ。

「明日、本当に一人で平気?やっぱり私も一緒に……」

「大丈夫だよ。もう私も、子どもじゃないんだから。明日、慎くんは身内だけだから普通の服でいいって言ってたんだけど……これでいいかな?法事って初めてだから」

私は旅行鞄の中から濃紺のワンピースの引っ張り出して、母に見せた。

「うん、それなら大丈夫よ。お供え物と香典はもう用意した?」

私が頷くと、母は柔らかな微笑みを溢して部屋を出て行った。