鋭いご指摘に、ぐうの音も出なかった。
それと同時に、彼の中で私は一応"女"として分類されている事を知り、少しだけ嬉しいような気にもなった。

「……行って来たら?やっと帰る気になったんだろ?」

健ちゃんはしばらく私をからかった後、結局最後には私が一番欲しかった言葉をくれた。
全てを見透かされていた事が急に恥ずかしくなった私は、何も答えられなかった。

「別に行ってみて、辛いとか嫌だとか思ったらすぐ帰って来たらいい話だろう?そんな難しく考えなくてもさ。盆休みが終われば仕事が始まって、俺も戻って来て、どうせ元通りの柚歌だよ」

少しの希望すら感じさせないその言い方に、何故かほっとした。彼の言葉はいつだって荒々しく、十分とは言い難い。けれどそれがどこか不思議な温かさと説得力を持っているのも事実だ。

ポップコーンを取り合いながらビールを飲んでいたら、健ちゃんのスマートフォンが鳴った。その砕けた会話の様子から、相手が彰人くんである事はすぐに分かった。