「傷つけるって……秀くん、知ってたの?」

秀くんの動きが一瞬ぴたりと止まった。

「あぁ……えっと……ごめん!俺、実は知ってたんだ。柚歌ちゃんの傷の事。だけど俺、その事は那月にも誰にも話してないから安心して」

秀くんは苦し紛れのフォローを入れてから、私の秘密を知る事となった経緯を説明してくれた。

「柚歌ちゃんと出会ってすぐの頃、泰輝が"俺、柚歌ちゃんの事好きかもしれない"って言ってきてさ。あいつ、まだ一回しか会ってないのに変かな?なんて笑うから、俺はそんな事無いだろって言ってやったんだ。
それからしばらくして、柚歌ちゃんの傷の事があって。泰輝"絶対那月ちゃんにも言うなよ"って、俺にその事話してくれた。あいつ、柚歌ちゃんになんて言ってあげたらいいんだろうって凄く悩んでたよ。好きだからこそ軽々しい事は言えないんだって。俺はなんでもよく考えずにズバズバ言っちゃうタイプだけど、泰輝はそうじゃなかっただろ?だから柚歌ちゃんに何をしてあげられるか、なんて言ってあげればいいのか、しばらくずっと悩んでたよ」

これ以上泰輝を知る事なんて出来ない、もう何年もの間そう思っていた私に、秀くんは泰輝から語られることの無かった真実を教えてくれた。
私はそれを一つも聞き漏らさないよう、息を呑んだ。