「本当に良かったね。泰輝も絶対に喜んでると思う」

私がそう口走った時、秀くんは少し寂しげに頷いて、テーブルの上にあったタバコに手を掛けた。私が同じように鞄からタバコを取り出すと、彼は一瞬驚いたような顔をしてから、備え付けの灰皿を二人のちょうど真ん中あたりに差し出した。

「泰輝が居たらさ、結婚式の友人スピーチ頼みたかったんだけどな」

煙と一緒に吐き出された言葉が、賑やかな居酒屋の隅に虚しく響く。私はその横で、四人で笑い合ったあの日々の事を思い出していた。

「今だから言えるけど……私、秀くんと那月は絶対結婚するんだって思ってたよ」

あの頃の私は、いつまでも四人一緒にいるのだと信じて疑わなかった。四人で居れば永遠さえ、容易く手に入るような気がしていた。
だけど今日、この場所には泰輝も那月も来なかった。
大人になった今、私たちはもうすっかりバラバラだ。