約束のちょうど五分前に到着すると、スーツに身を包んだ彼は、もう改札の外に立っていた。

「ごめんね。待たせちゃった?」

私が声を掛けると、彼は真っ白い歯を見せて昔と同じように笑った。

「ううん、俺もさっき来た所。なんだか先に着いてないと落ち着かなくてさ、これも営業マンの性ってやつだな」

「そっか。秀くん、本当に久しぶりだね。スーツなんて着ちゃって。ちょっと不思議な感じがする」

その笑顔こそ変わらないものの、秀くんはすっかり大人の男性へと変貌を遂げていた。

「柚歌ちゃんこそ綺麗になったな、最後にあったのは確か……」

「那月と三人で会った時。私がこっちに来たばかりの頃だったから、四年前?」

私が秀くんの代わりに続けると、彼はその表情にわずかなきまりの悪さを滲ませながら頷いた後、近くに行きつけの店があるのだと言って歩き出した。

しばらく彼の背中を追いかけて路地裏を行くと、小さいながらも雰囲気の良い、和風の居酒屋に辿り着いた。