いつのまにかビールが美味しく飲めるようになった事
今でも泰輝を忘れられずにいる事
恋人でも何でもない私と健ちゃんが、当たり前のように週末を共に過ごす事
月曜になればまた、社会の一部となってただただ仕事をこなす事。

心臓が動いているように、ただ息をしているように、私はその全てにもう、疑問すら感じなくなっていた。

「最近サキさんと、どうなってるの?」

私は分かりきっている事を、訳もなく健ちゃんに尋ねてみた。

「別に変わりないよ。彼氏が出張行った時だけ連絡してくるから、そしたら俺が会いにいくスタンス」

「相変わらずキスまでの関係?」

「まぁな」

「プラトニックー♪サキさん焦らすなぁ」

「うっせーよ」 

健ちゃんが後頭部を掻いて、小さくなったタバコを揉み消す。私はその隣に同じようにタバコを押し付けて、彼を見上げた。

切れ長のはっきりとした二重瞼を眉毛と一緒に持ち上げて、健ちゃんは残っていた缶の中身を一気に飲み干した。