驚いて顔を上げると、彼の手には色も形も、私の物と全く同じ携帯電話が握られていた。

「ケータイ一緒!」

「わ、本当だね」

携帯電話を差し出した泰輝くんがあまりに無邪気に笑うので、私はついついそれに釣られて、最後には一緒に笑っていた。

長かった一日の終わり、思いがけない共通点のおかげで、ほんの少しだけ彼と打ち解けることができたような気がした。

「じゃあ……今度こそ帰るね。ありがとう!」


「おう!気をつけて帰りな」

泰輝くんはニコニコと手を振ったまま、いつまでもそこに立っていた。
   



ホームで電車を待ちながら、私は手にした携帯電話をしばらく眺めていた。さっきまで何でもなかったそれが急に特別な物に変わったような、そんな気がした。

"ピアスの穴開けると運命変わるとか言うよね"

頭の中で那月の言葉がこだまして、泰輝くんの笑顔がぼんやりと浮かんだ。