「泰輝くん、送ってくれてありがとう。今日は楽しかったです。それじゃ、また」

カラカラになった喉で月並みのお礼を伝え終えると、そこから一刻も早く逃げ出すべく、私は改札口を目指した。

「あ、柚歌ちゃん!ちょっと待って」

「……はいっ!?」

僅か数歩踏み出したところで呼び止められ、落ち着いたばかりの心臓が再び忙しさを取り戻す。
なんだか心の中を見透かされたような気がして、私はビクビクしながら彼の元へと戻った。

「あのさ、連絡先。聞いてもいい?」

「……あっ!うん。いいよ!」

その申し出が意図していたものとは全く違っていた事に、私はほっと胸を撫で下ろした。

鞄にゴソゴソと手を入れて、携帯電話を探す。そのたった数秒さえ何とも気まずい時間のように思えた。そして私がようやくそれを見つけ出した時、泰輝くんは突然声を上げた。

「あっ!」

「えっ?」