間髪入れずに聞こえてきた秀くんのいつになく慌てた声は、私の胸騒ぎを現実の物にした。

電話を切ると同時に、全身の血が一気に抜けてしまったような気がした。
手足はガタガタと震えだし、手放してしまった携帯電話がフローリングの上に転がって物凄い音を立てた。

「おい、どうしたんだ柚歌。真っ青な顔してるぞ」

「柚歌大丈夫?なにかあったの?」

父と母は、固唾を飲むように私を見ている。

「泰輝が……事故に……大学病院に運ばれたって秀くんが電話で……急いでって」

一刻も早く。その気持ちとは裏腹に、震えが邪魔して上手く言葉にならない。

「事故って!?泰輝くん、大丈夫なの!?」

「分からない……」

「大学病院に居るんだな!……よし、美紀子は家で待ってろ。病院に着いたら連絡する。ほら柚歌!しっかりしろ。泰輝くんの所へ行くぞ!」

父は震えの止まらない私をソファーから引き剥がすと、大学病院まで車を走らせた。