穏やかに打ち寄せる波や砂浜の温度、時折響くウミネコたちの鳴き声。
ここにある全てが、私たちにあの日を思い出させる。この場所は少しも変わらないのに、私たちの距離はあの日から随分と近づいた。

「明日のバーベキュー楽しみだね」

「うん。皆揃うのは卒業式ぶりだ」

「私は初めましての人ばかりだから、少し緊張してる」

「大丈夫だよ、皆いい奴だから。秀と那月ちゃんもいるし」

同時期に帰省する東砂原高校の友人達とバーベキューをする事になった。
泰輝からそんな話を聞いたのは、確か一週間程前だった。事の成り行きで、私と那月もそれに参加させて貰える事になったのだ。

「秀くん元気かな?」

「あいつは間違いなく元気でしょ。那月ちゃんはどうしてる?」

「那月も相変わらずだよ。一昨日も秀くんが帰ってくるの待ちきれない!ってメールして来たくらい」

「そっか。それで、柚歌は何て返事したの?」

「え……私も待ちきれない!って返事した……」

「なんだよ、照れちゃってさ」

泰輝は満足げな顔で、赤面した私の頭をくしゃくしゃと撫で回した。