「お母さんにバレなかった?」

「うん、多分。那月ちゃんのご両親によろしくって」

泰輝に預けたままの紙袋を指差す。

「まったく、那月ちゃんも柚歌も不良娘だよなぁ」

「人ごとみたいに言ってるけど、バレた時は泰輝も同罪だからね」

「あーあ。なんか俺、お盆休み帰るのが怖くなってきた」

軽口を叩き合いながら五分程歩くと、それなりに年季の入った三階建てのアパートに辿り着いた。階段を上がって二階の一番奥の部屋の前まで来ると、泰輝はもうすっかり慣れた様子で、鍵を開けた。

新しい家具や家電が必要最低限置かれた1Kの部屋には、生活感はあまり無い。
ゴミ箱からはみ出しているコンビニ弁当の容器を見つけ、それも腑に落ちた。

唯一見覚えのあった小さな折り畳みテーブルの横で腰を下ろした時、部屋の隅に飾られたツーショット写真に気がついて、思わず口元が緩んだ。

「柚歌はそこでゆっくりしてていいよ。昼飯は俺が作るから」

冷蔵庫で冷えていた麦茶をグラスに注いでテーブルに置くと、泰輝は再びキッチンに戻っていった。